中国茶の分類と製造方法

5千年もの歴史を有するとされる中国茶。銘柄を数えれば数千も数万もあると言われ、多くの研究者が様々な角度から分類を試みてきました。

その中で1978年、当時、安徽農業大学教授の陳椽教授(故)が提唱した”6大基本茶類”の考え方は、現在、中国茶のみならず、”茶”全体の基本的な分類方法として世界に認知されています。なお、陳椽教授は当協会代表王亜雷のマスター時代の指導教官で、王は陳教授の最後の直弟子のひとりになります。

6大基本茶類とは、「製造方法」と「品質」を根拠に茶を6つのグループに分類したもので、乾燥工程を経た茶葉の色をもって「緑茶」、「黄茶」、「黒茶」、「白茶」、「青茶」、「紅茶」と各グループ名が付けられています。ちなみに近年は「青茶」の代わりに、広義の「烏龍茶」を使うことが多くなっています。

“茶”とは茶樹(学術名:カメリア・シネンシス/Camellia sinensis)の葉を原料とする食品の総称です。近代においては、「飲み物」の形で摂取されることの多い”茶”ですが、人類との付き合いは「薬用的食用」から始まったとされ、今でも「食べ物」として生産している地域があります。ちなみに、〇〇茶とか〇〇ティーと称しながら、原料が茶樹の葉ではない、例えば麦茶、杜仲茶、マテ茶、各種ハーブティーなどは”茶外茶”と呼ばれ、本来的な”茶”とは区別されます。

製造方法から見た6大基本茶類

各製造工程の詳細

生葉

茶葉は様々な成分を含みますが、味わいに影響を与える主たるものとしては以下の4つがあります。

・カテキン:渋み
・アミノ酸:旨味
・カフェイン:苦味
・糖:甘味

各成分の含有比率は茶樹の品種や摘み取り時期によって異なりますが、カテキンは水分を除き最も含有量が多く、味わいの他、色や香りにも関与しており、健康に対する機能性の高さも加わって、最重要成分と言えます。

摘採

茶葉の摘み取り時期は生育条件や状況、或いは製造する茶類によって異なりますが、おおよそ以下の通りです。

・緑茶:早春
・黄茶:早春
・黒茶:初夏
・白茶:早春
・青(烏龍)茶:晩春~初夏&初冬
・紅茶:初夏


殺青

茶葉を加熱します。これにより茶葉が含有する酵素類が失活し、酵素による化学変化が抑えられます。

この際の加熱方法としては「炒る」と「蒸す」の2通りがあり、中国緑茶は前者、日本緑茶は後者の手法を主とします。

萎凋

屋外と室内の両方、或いは室内のみで一定条件の下、一定時間、茶葉を放置しする工程です。この間、茶葉には以下に代表される大きな変化が起こります。

・酸化酵素の活性により、カテキンが酸化され赤色系に変色を始める。
・加水分解酵素の活性により、芳香物質が生成される。



揉捻

茶葉を揉捻する目的は大きく2つあります。

・茶葉の形を整える。
・茶葉の細胞を壊し成分を抽出しやすくする。

特に中国茶の中でも緑茶や黄茶は形を重視する為、技を駆使して美しい形に仕上げます。

悶黄

いわば茶葉をムレさせる、黄茶特有の工程です。「殺青(加熱)」後、茶葉を少量づつ紙に包み、密閉性の高い容器に入れるなどして一定時間放置し、茶葉自体の熱と水分で茶葉に変化を起こします。茶葉の状態を見ながら焙煎、密閉放置を繰り返すことで、独特の色、香り、味わいが出てきます。

渥堆

茶葉を大量に堆積し、一定の水分と温度を保ちながら一定時間放置します。この間、混入した微生物による発酵により、茶葉に大きな化学変化が生じます。堆積のスタイルや放置時間、微生物の種類などは各黒茶によって異なります。

蒸圧

茶葉を型に入れ、蒸気を当てた後、圧縮して固形にします。黒茶の多くはこの形態に仕上げられ、円盤型、ブロック型、半球形など様々な形があり、それぞれ以下のように呼ばれています。

・円盤型:餅茶
・ブロック型:磚茶
・半球形:沱茶


做青

青(烏龍)茶の製造に特有の工程で、茶葉の攪拌と静置を繰り返します。攪拌においては、その際に生じる茶葉表面の傷や水分蒸発などのストレスを受けて、より活性化した酵素よるカテキンの赤色化、芳香物質の生成などが一層進みます。静置では、水分を蒸発させながら茶葉全体の水分量を平均化することで、これらの化学変化をバランスよく継続させる状況を作ります。

揉切

紅茶の製造において、茶葉に強い圧力をかけながら揉む工程です。茶葉の細胞が激しく破壊され、茶葉成分を含む茶汁が沁み出してきて茶葉の表面に付着し、酸化酵素によるカテキンの赤色化が一気に進みます。

発酵

紅茶の製造において、茶葉を室温25度から30度、湿度を90%前後の状況に静置し、揉切で一気に加速した茶葉内の化学変化を平均化させながら適切な程度まで進める工程です。

乾燥

茶葉を乾燥させます。茶類によって異なりますが、最終的に茶葉中の水分量を5~7%くらいにもっていきます。なお、中国緑茶は乾燥方法によって3つのグループに分けることができます。

・炒青緑茶:炒って「殺青」した茶葉を成形を兼ねた揉捻をしながら炒って乾燥を進めます。
・烘青緑茶:炒って「殺青」した後、軽く「揉捻」した茶葉を焙る状態で乾燥を進めます。
・晒青緑茶:炒って「殺青」した茶葉を日光を利用して乾燥を進めます。